父の着物と羽織を弟のコートへ

生前、父が大切に着ていた着物と羽織りを、弟が一生着られるようなモッズコートにリメイクしました。

おしゃれ好きだった祖父から譲り受けた父の着物。

母の話では、おそらく100年近く前のものではないかと…。

この着物の柄を見ると、私たち家族は「あ、お父さん」と思い出すそんな馴染みの深い着物です。

私の生まれた家は、明治生まれの祖父のそのまた祖父の時代から、その土地に住んでいて、そのことを父や祖父はとても誇りに思っていました。

もちろん私たち姉妹のことも、うんと可愛がってくれた父や祖父ですが、まだ幼い私の弟を「うちの5代目」と言っては特別に可愛がっていました。

その祖父や父の喜びや期待、将来の子孫を思う気持ちをどうしても形にしたくて仕上げたコートです。

父や祖父が孫の孫の代のためと言って植えた木々も、父が亡くなってから雑草の手入れができず人が入られない状態になっていましたが、今年の夏に弟が業務用の機械を借りて弟家族と姉家族で手入れして守ってくれました。

私は何一つ手伝いもできないけれど、父や祖父たちの想いを継承してくれている家族に感謝です。

弟がかぶっている帽子は、「丸メガネにハンチング帽を被りスーツを着て自転車で出かけた新しい物好きの祖父」に敬意を込めてコーディネートしました *

制作にあたってはたくさんの方々のお力をお借りしたこと、特に職人のAZさんの存在なくては成り立ちませんでした。

ヘアメイク土山悦さん、カメラマン松井宏一郎氏にはウェディングドレスのコレクションの撮影をスタートする以前から、大変多大なお力添えをしていただいています。

洗い張りの職人さんと繋げてくださったSさん、職人のYさん、たくさんの方々のお力のおかげで思いを形にすることができましたことに心から感謝しています。

ps.最後の一枚は赤ちゃんの頃の弟と父の写真。赤ちゃんも普段着に着物を着ていたみたいです。

人やものとの繋がりを大切にすることで未来と繋がる。

守られているような安心感や生きる力が湧いてくる。

本当に好きなもの、捨てたくないもの、長持ちするもの。

そんなものづくりを目指しています。