洗い張り「とき」「はぬい」編


前回に続いて、山形市にある「山川しみぬき店」さんの店内で見せていただいた洗い張りの作業について書いていきます。

一般的な丸洗いではなく、手作業で丁寧に仕上げる山川 裕之さんのお仕事は、お父様の代から受け継がれたもの。

たくさんのお着物が山川さんの手によって、美しく仕上げられるのを待っています。

お着物が吊るされているこだわりの空間は、まるで舞台裏の衣装部のような雰囲気。

その非日常的な空間に特別に潜入させていただけた嬉しさに、振り返ってお写真を見るたびにワクワクしてしまいます。

洗い張りのお仕事の始まりは、まず着物をほどくこと。

山川さんのお母様がご担当されていらっしゃいます。

お見事な手さばきで、するすると手際よくほどかれていらっしゃいました。

次の工程は、「はぬい」という作業で、ほどいた着物の端をミシンでつなげていきます。

ミシンがなかった頃は手作業で行ったそうで、時間や手間がかかっても、ものを大事に扱った昔の方の想いまで伝わってきました。

ご説明してくださる時、山川さんもお母様も終始笑顔で温かな雰囲気で迎えて下さったことに改めて感謝しています。

「ほら、こんなふうに糸を切ると簡単に解けるのよ」とレクチャーしてくださいました。

お母様が柔らかく温かな手で、かけているミシンは、なんと幻の1本ロック。

私たちが洋裁を学んだ頃のベーシックは3本の糸がかかる3本ロックで、それ以前は2本のものもあったらしい…という噂は聞いたことがありますが、1本ロックの存在を初めて知りました。(今の主流は4本ロックも定着しています)

現在は修理ができる人もいないそうなのですが、ロックミシンのメーカーの本社がたまたまご近所にあることから、特別に見ていただけているそうで素晴らしいご縁ですね。

幻の一本ロックミシンも、脚光を浴びて誇らしげです!

ほどいた着物の長さをつなげて、反物の状態にする「はぬい」ができました。

つながった着物地を反物のように巻いていき、洗い張りの下ごしらえが完了です。

いよいよ洗い張りの山場?である「洗い場」に立ち入らせていただいたシーンをご案内していきます*