お客様のE様から、お母様の大切なお着物をお預かりしました。
なんとも華やかで艶やかな美しいお着物にうっとり。
クリーニングでいつもお世話になっている堺さんにお渡ししたところ、「このお着物は丁寧にお手入れをされていて、家紋も金糸で刺繍されています。年代は古いものですがとても良い状態を保たれています」とご連絡をいただきました。
「袖の長さから推測すると、おそらく振袖だったものをカットしたものではないでしょうか…」とのことでした。
そのお話をE様にお伝えしたところ、「なんとなく柄が可愛いからリメイクしたいと思ったけれど、母がそんなに大切にしていたなんて。そのことが知れて嬉しい」とお話ししてくださいました。
山川しみぬき店の山川さんが丹精を込めて仕上げてくださった反物は、毎回新品同様の美しい仕上がりに感謝が溢れます。
E様は「ドレスは着る機会がないけど、普段に着られるものにリメイクしたい…」とご相談くださって、妹さんとご一緒にご着用されるスカートとブラウスを仕立てさせていただきました。
仕上がりをフィッティングされて「着物だったと思えないのがすごい。想像していたものよりも100倍素敵!!」と喜んでくださいました。
女性に生まれたことの喜びを表現したような可憐で華やかな花柄のお着物は、布の面積の大きいスカートの柄が活きることを優先して柄を配置しました。
ブラウスは、その残りの部分で裁断できる布の大きさに合わせてハイウエスト切り替えのフレンチスリーブのデザインに決定。
一着分の着物という限られた布を洋服にする場合は、軸になるものを先に決めることで、全体的な調和が保たれるからです。
後ろで結ぶリボンは、ウエストの絞り加減を調整する役目も果たし、実用性を兼ねた後ろ姿のアクセントにもなります。
スカートのウエストベルトは、柔らかいインナーベルトを使用し、後ろのギャザーのゴムもきつすぎない長さに調整し、フィット感のあるシルエットでありながら体に負担の少ない優しい着心地感を実現しました。
金糸で刺繍されている家紋は、前スカートの左右のかげひだの内側にくるようにして、いつでもお母様やご先祖さまとの絆を確認できる位置に配置しました。
Vネックの胸元とフレンチスリーブのデザインは、E様がご結婚の際にご着用下さったルーチェクラッシカのウエディングドレスのデザインから着想したものです。
ドレスの時よりも胸元の開きは控えめにし普段使いしやすいデザインを意識しましたが、お幸せいっぱいの美しい花嫁の思い出とお慶びがいつまでも続きますようにと願いを込めてご提案させていただきました。
E様のお母様が大切にされていた華やかなお着物を、私たちのアトリエでリメイクさせていただけましたことを心から感謝いたします。
本当にありがとうございました。