声楽家のM様から黒留袖をお預かりし「日本のうたを歌うときに着るドレスにリメイクできますか」とのご相談をいただきました。
色とりどりの牡丹や菊、梅、あやめ、鳳凰など華やかな柄の素敵なお着物。
M様のご希望は「舞台で映えるように後ろのトレーンをひくドレス」。
最初のデザイン画では、流行に左右されない七分袖のご提案をさせていただいたのですが、M様から「黒柳徹子さんが昔に着ていたようなパフスリーブのドレスなども気になります」とご提案いただき、「ああ、まさにM様の持つ優しさと華やかさにお似合いになりそう」とM様にふさわしい大人パフスリーブのドレスをご用意させていただきました。
肩先がふくらまずに袖口に向かってドロップしたパフスリーブは、ポイントを下に下げることで可愛らしくなり過ぎずに、お顔やお体に馴染む曲線で優しさや柔らかさを表現できます。
身頃とお袖には、世界最高峰のソフィ・アレット社のフランスレースを使用しました。
イギリス王室のキャサリン妃のウエディングドレスにもソフィ・アレット社のレースが使われたことで一躍有名になったブランドです。
素材そのものも、日本の伝統衣装の着物とヨーロッパの伝統的な技術で作られたレースの融合となりました。
ドレスは、美しい黒留袖の柄を流れるように使用し、トレーンを引きました。
トレーンは、ただスカートの裾を延長するだけではなく、布の流れを意識しつつ余計なだぶつきがないように配慮しながら形作ることで美しい裾の流れを出すことができます。
共布でウエストのリボンを作り、後ろで結べるようにご用意させていただきました。
トレーンの長さと調和するように、リボンテール(尻尾)も長めにして可愛らしいリボンも落ち着きのあるエレガントな雰囲気に仕上げました。
「明日は、うぬぼれ鏡という曲や赤とんぼを歌います」と教えてくださったM様。
最初のデザイン相談の際や仮縫いの際もステージのお話や音楽のお話以外にも楽しいお話が弾んで、いつもアトリエが優しい空気に包まれるのを感じます。
「日本のうたを歌う方は着物をリメイクしたドレスを着る方が多いのですが、こんなに素敵なドレスは見たことがないです」とおっしゃってくださったM様。
来月には、もう一着お預かりしている黒留袖のドレスもご用意させていただきます。
大切なお着物を2点もお持ちくださり、お任せしてくださって本当にありがとうございます。
M様の優しいお言葉やご依頼に励みをいただき、お力をいただきましたことに心から感謝して次のお仕事に繋げたいと思います。
ありがとうございました。
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