フランス式のコサージュは、一般的な日本に広まっている量産型の造花作りと全く違う手法で作られています。
古い時代のフランスの修道院で作られたのが起源と言われているコサージュ作りは、美智子上皇后の専属帽子デザイナーだった故・平田暁夫氏から私たちのアトリエの職人が学びました。
平田暁夫先生の教えをベースにし、ルーチェクラッシカのオリジナルデザインのコサージュを制作しています。
細密なコサージュ作りは、まるで繊細なフランス菓子を作る工程に似ていて、熟練したパテシエさんのお仕事と共通するような気がしています。
まずは、カメリアの花びらの厚みと丸みを出すため、デニム生地をくぎの刺さった木枠にはめていきます。
熱を加えた秘伝の糊(のり)をハケで、手早く塗っていきます。
のりを張った生地の上にさらに同じデニムを重ね、二重張りします。二枚の布がピッタリ重なるように、くぎの奥までしっかり刺します。
驚くのは、ここでしっかり乾かすために一晩寝かせること。
古式のコサージュ作りは、とにかく待ち時間が長いです。
急げない、という点ではドレス作りと共通するところがありますが、とにかくスローペースで進める。焦らない、ということが鉄則です。
しっかり乾いたデニム生地は、裏側に鉛筆で花びらの形に線を引いていきます。
ハート型なのが可愛いですね。
花びらをカットする時は、鉛筆の線が残らないよう、でも切りすぎないよう集中しながら進めていきます。
この時にアバウトになってしまうと、最終的にまとまりのないぼんやりした仕上がりになってしまうので、あくまでもきっちり丁寧に行うことが求められます。
「手間のかかる花びらのカットは型抜きでできないのですか?」と聞かれることがあるのですが、型抜きは、すべてのお花の種類が揃っている訳でなく、かなりの量を作る時には便利ですが、少ないロットで作る場合には、手でカットすることがほとんどです。
繊細なお花や、こだわったデザインのお花は、型がないことが多いので、私たちのアトリエでは型抜きを使用することがほとんどなく、手で一枚一枚カットするところからスタートします。
本場のフランスでも存続が難しく、今は老舗のアトリエ・レジュロンがオートクチュールのコサージュを作っているのみだと聞きます。
そんなフランス式のコサージュ作り、次回に続きます。