お客様のH様からお預かりしたウエディングドレスのリメイクが完成しました。
納品の際に見せていただいた27年前のご結婚式の美しいおふたりのお写真。落ち着きと共に未来への期待や、お幸せに包まれた表情に見る人をも幸せにしてくれるお写真です。
オーストラリアに留学中だった旦那様のNさんとのご結婚式のために、お母様とご一緒に選んだウエディングドレスは、たくさんの祝福や思い出が詰まっていました。
スーツケースに大切に保管されていたドレスは、経年で色が変色しているものの、シルクの品質は最高のままの状態でした。
お母様とのドレス選びが昨日のことのようによみがえり、その時のお話をしてくださったHさんの感情や想いが伝わってきて、このドレスを長く着られる素敵なものにリメイクしたい…と心に決めました。
H様とお母様がお気に召された豪華なレースのドレスは、見応えのあるものでした。
いくつもの種類のレースを重ね使いしたり、レースの部分とチュールだけの部分で構成することで、豪華さの中にも軽やかさと動きのある表情になっているところが素晴らしいと感じました。
大切なドレスのリメイクは、まず仕上がっているドレスをほどくところからスタートします。
長い長い道のりのドレスリメイクですが、焦らず着実に前に進むことだけを目指して作業を重ねました。
ドレスのデザインを決め、全体のシルエットの確認やおサイズ合わせのための仮縫いを行う間に、職人の手で染色も行いました。
明るいネイビーに染め上がったシルクは、白い布だった時よりも色の深みが入ることで、輝きを増したように感じました。
お湯通しをしてシワになったものを伸ばすアイロンがけも納得いくまで何度も何度も丁寧に行うことで新品の時に近い気品を取り戻しました。
レースも、しっかり色が入り、ドレスとの調和が取れる仕上がりになりました。
襟ぐりは、H様の鎖骨の美しさを際立たせる優しいボートネック。
肩先を柔らかく包み込むフレンチスリーブは、気になる二の腕をすっきりと見せてくれる効果と、女性らしい柔らかさを表すことの出来るデザインです。
スカートのラインは、ヒップまではお体にフィットし裾に向かって緩やかにフレアを入れたマーメイドラインのシルエットは、H様の知的で洗練されたイメージに合わせてデザインしました。
襟ぐりには、H様とお母様がお気に入りだったレースを施しました。
レースは極力控えめに使うことでドレスの光沢が輝き、洗練された印象で若々しい印象のドレスになります。
仮縫いでH様のアイディアから追加のご注文をいただいたボレロは、肩線のないきものスリーブのデザイン。
1920年代のジャポニズムブームの際にフランスの最先端のモードとして世界に広がった「マンシュ・キモノ」(きもの袖)がお似合いになりそうとイメージが沸きました。
こだわりの古民家を素敵に改修して旦那様と共に素敵なカフェを営むH様は、素材の良さや古いものの素晴らしさを大切にした生活をしていらっしゃいます。
そういったH様のライフスタイルが、ボレロをこだわりのきものスリーブのデザインに結びついたのかも知れません。
H様の内側に秘めた可愛らしさや女性らしい柔らかさを袖口のギャザーで表現することで、シルクの艶やかさも増しました。
ボレロの横からのシルエットは、なだらかなフレアが小鳥のような雰囲気になるのもチャームポイントです。
こだわりの審美眼をお持ちの旦那様は、仮縫いの際に「何か見慣れないな…」とおっしゃっていましたが、仮縫い修正後には、ボレロの袖のデザインをとてもお気に召してくださりホッとしました*
髪飾りは、シルクのサテンリボンを幅違いで3種類用意し、レースを重ねました。揺れるリボンの下の位置があごのラインに来るように計算しH様の華やかさと優しさを表現しました。
ドレスのタグは、H様とお母様のお気に入りだったインポートのブランドのものとルーチェのものをダブルネームで付けました。
ウエディングドレスを全てほどき、リメイクさせていただいたのは初めてでしたが、お客様の最高の笑顔とご満足いただけたことが私にとってもありがたい貴重な経験でした。
H様&N様、素晴らしいチャンスを本当にありがとうございました。
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